映画『リトル・ダンサー』を観て、父親の愛に泣かされた

映画『リトル・ダンサー』を観終わったあと、しばらく頭から離れなかったのはビリーではなく父親の姿だった。
最初は「なんてひどい父親なんだ」と思ったのに、物語が進むにつれてその怒りの理由が少しずつ見えてくる。
この映画は少年が夢を追う物語であると同時に、炭鉱町の価値観の中で生きる父親の物語でもあるのかもしれない。

※本記事の評価は、こちらの基準に基づいています → 評価基準はこちら

目次

作品紹介

作品情報

作品名(原題/邦題)Billy Elliot / リトル・ダンサー
監督名スティーヴン・ダルドリー
公開年(国または地域)2000年(イギリス)
主要キャストジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ゲイリー・ルイス
年齢制限(レーティング)G(日本)、R(米国:強い言語表現のため)、15(英国)

作品評価

IMDb スコア7.7/10
Rotten Tomatoes(批評家 トマトメーター)85%
Rotten Tomatoes(観客 ポップコーンスコア)89%
TMDB スコア7.7/10
Filmarksスコア4.2

あらすじ(ネタバレ無し)

photo by Sofa Time

1984年、ストライキに揺れるイギリス北部の炭鉱町。11歳の少年ビリーは、父の勧めでボクシング教室に通っていたが、偶然隣で練習していたバレエ教室に心を奪われる。男が踊るなどあり得ないという古い価値観の家族に隠れ、ビリーは自身の情熱と才能を開花させていく。厳しい現実の中で夢を追う少年と、彼を支える人々を描いた感動の物語。

ネタバレ有り感想

映画を観終わったあと、しばらく余韻に浸っていた。
「感動した」とか「良かった」とか、そういうありきたりな言葉だけでは言い表すのが勿体なくて。ただ、ビリーの父親の顔が頭から離れなかった。

最初は正直腹が立っていた

ビリーの母の形見のピアノを叩き壊すシーン。あれを観た時、正直言って「なんてひどい父親だよ!」と思っ
た。息子がやりたいことを頭ごなしに否定して、怒鳴って、壊す。感情的で、視野が狭くて、典型的な毒親パターンじゃない?って思った。


でも映画が進むにつれて、だんだんわかってきた。

あの怒りはただの支配欲じゃない。1984年のイギリス・ダラム。炭鉱ストライキの真っ只中。男
は強くあるべきで、感情は見せないもので、バレエは「女の子がやるもの」だという価値観が空気の
ように漂っている町。ビリーの父はその時代の重い空気を吸って生きてきた人だったんだよね。


だからビリーを守りたかった、というのが正確なのかもしれない。父は怒ってでも止めるっていう、その「守り方」しか知らなかったんだね。

「俺たちは仕方ない、でもビリーはまだ11歳だ」

この台詞がこの映画で1番私の心を抉った。


兄に向かって父が言うこの一言には、諦めと希望が混在している。「俺たちは」という言葉の重さ。


炭鉱町に生まれた男として、ストライキを戦う労働者として、もうここから出ていく選択肢がないこ
とを、父は受け入れて生きているんだよ…


自分の人生の限界を口にしながらも息子の未来の可能性を守ろうとする。


それは美しいけれど、同時に悲しい。

本当なら父にも兄にも、もっと違う未来があってほしかった。

生まれた時代で人生翻弄されるのわかる世代です…辛いよね

文化の壁を知ると、物語の解像度が上がる

日本人としてこの映画を観ると、「なぜそこまで反対するの?」と不思議に感じる場面がある。

男の子がバレエをやりたいと言っても、日本なら「大変そうだね」「お金かかりそう」くらいの反応で、偏見の
対象にはなりにくい気がするんだよね。


それは多分、日本が歴史的に「美しい男性」を肯定してきた文化を持っているからだと思う。平
安時代の光源氏に始まり、歌舞伎の女形、宝塚、ジャニーズ。中性的な美しさは、この国では昔から
自然なものとして扱われてきたからかな。

一方で、当時のイギリスには「男は強くあるべき」という価値観が根強く残っていた。
炭鉱町では特にその傾向が強く、男の子がバレエを踊るというのは、町の空気からすればかなり異端だったのだと思う。


文化が違えば、夢を追うことの「大変さ」もまったく違う形になる。ビリーにとって、バレエを踊る
ことは単なる夢追いではなく、時代の価値観への反抗だったのかもしれない。

ラストで父が泣いたとき

ラストで、大人になったビリーが舞台の上で白鳥として跳躍する。

あれはマシュー・ボーン版の『白鳥の湖』で、白鳥を踊るのがすべて男性という、伝統を覆した演出。

その選択自体が、映画のテーマそのものだった。

客席で父が静かに泣く。


その涙の中には、いろんなものが詰まっていると思う。亡くなった妻への想い。自分が質に入れた形
見。ストライキを裏切った苦い記憶。でもそれ全部を抱えて、それでも息子のビリーがここに立っている。

「父の思いは報われた」というより、「ようやく報われた」という感じがした。長くかかったな、
と。


この映画はビリーの物語だけれど、同じくらい父親の物語でもあったし、素晴らしい「家族の物語」だった。

まとめ

観てよかったと思える映画


エンタメとして面白いとか、感動ポルノだとか、そういう評し方もできるかもしれない。

でも私にとっては、観た後に「人の価値観ってこうやって形成されるんだな」とか「文化が違えばこれだけ景色
が変わるんだな」とか、いろんなことを静かに考えさせてくれた一本だった。
ハッピーエンドで終わるけれど、色々な事を考えるきっかけになる1作品になった。

リトル・ダンサー(Billy Elliot)
物語
8.5
キャスト
8.5
音楽
7.5
私の好み
8
良かった所
夢に向かって頑張るビリーへの共感
父や兄、バレエの先生、同級生との関係
当時のイギリスの時代背景を知る事ができる
音楽も良い!
イマイチな所
時代背景をおさらいしてから見るとわかりやすい
8.1
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次